八丈島の自然。
全ての命は海を越えて
海底火山が噴火して形成された八丈島。十数万年以上の歴史を有する三原山、そして一万年ほどの若い八丈富士という2つの火山が合わさってできたひょうたん型の島は本州とは一度もつながったことがないとされています。全ての命は海を越えてやってきたのです。
白い花が美しいオオシマザクラ
風(wind)、海流(wave)、そして鳥の翼(wing)という3つのWによって島にもたらされた命は、時を経てやがて島ならではの形に姿を変えました。
植物では、大型化する(例外あり)、花が白っぽくなる、葉が厚くなる、トゲが無くなるなどの特徴があります。ハチジョウキブシ、オオシマザクラ、シマホタルブクロ、ラセイタタマアジサイ、トゲナシサルトリイバラなど、本州の同じ仲間とぜひ比べてみてください。その違いは気候、花粉を運ぶポリネーター、外敵などとの関連がありそうです。
シチトウメジロ
鳥では、大型化する、くちばしが長くなる、黒っぽくなる(例外あり)、産卵数が少ないものがある、などの特徴があります。シチトウメジロや、モスケミソサザイ、オーストンヤマガラなどは伊豆諸島固有種。また天然記念物アカコッコ(留鳥)やイイジマムシクイ(夏鳥)はトカラ列島と伊豆諸島に、タネコマドリ(留鳥)は屋久島と伊豆諸島にのみ生息しているというのはなかなか興味深いです。
島ならではの昆虫としては、ハチジョウカラスアゲハやハチジョウノコギリクワガタなどが有名です。カラスアゲハの中で最も美しいもののひとつと言われているハチジョウカラスアゲハには春型と夏型があり、初夏にはハイビスカスの花で蜜を吸っている姿がよくみられます。またハチジョウノコギリクワガタの特徴はあごが小さく飛ばないこと!おもしろいですね。ところで八丈島にはクワガタは6種類いるのですが、カブトムシはいません。一体なぜでしょう・・・?
島の生きものを知ること
お客様に「八丈島には熊はいますか?」とよく聞かれるのですが、その答えは? 熊は海を越えられませんよね。ですから「いない」というのが答えです。牛やヤギ、犬や猫などは人間が持ち込んだほ乳類ですし、たまにみかけるイタチも1960年頃にネズミ駆除の目的でもたらされたものです。でも陸上のほ乳類でただ1種類だけ、自分の力で島へ渡ってきた種類があるのです。それはいったい誰???
島の生物・・・それぞれの生きものが島へ渡ってきた過程や、渡った後の生き様。そして生き延びるための努力を想像すると、そのすばらしさに思わず感動してしまいます。自然てなんてすばらしいのだろう!と。その自然に対して私たち人間は何をするべきなのでしょうか。人や物の交流が簡易になった現代。島の自然をそのままに残すことは、少しずつ難しくなっているように思います。
でも、まずはそれを体験的に知ること。それが第一歩だと思います。世界の中でここでしか見られない島の自然を考えることは、もっと広い地域の自然を考えることにつながります。そういうきっかけをツアーを通じて提供したい・・・という事が私たちのささやかな願いです。
ハチジョウノコギリクワタガ